92歳の高齢の親、いつまで自宅に住み続ける? 安心の早めの住み替えへ

公開日:2020年4月3日|更新日:2023年2月20日

歳を重ねると誰でも、思うように身体が動かなくなるものです。そこで気にかかることの一つが、高齢期の住まいの備えではないでしょうか。「自宅をバリアフリー対応にリフォームするか、それとも高齢者向けの住宅に住み替えた方がいいだろうか……」。
高齢者ご本人のご不安や、ご家族の「一人暮らしを続けてよいものか、同居をした方がいいのかだろうか」というお悩みは尽きないもの。高齢の親に優しくしたいと思いながら、ついイライラしてしまったり。背景には、高齢になって身の回りのことをどこまで自力でこなせるか想像しにくい、足腰が弱ったときに今の自宅との相性がどう変化するかは想像しにくい、という点があります。

そこで本記事では、一人暮らしの90代男性がサービス付き高齢者向け住宅への住み替えを決意した過程を紹介します。お話をうかがったのは、男性と離れて暮らす60代のご長女です。高齢の親との付き合い方、加齢にともなう生活自立度の変化や、築年数の古い住宅に関する悩みなど、老後の住まいを考える上で参考にしてみてください。

目次

50代から約40年間は、問題なかった一人暮らし

お話をうかがった女性のお父さまは現在92歳。築50年を超える、エレベーターのない5階建ての団地(旧公団住宅)で暮らしています。

「父は50代のころから一人暮らしを続けています。家事の得意なタイプではなかったのですが、まだ元気で若かったこともあり、家事や食事の用意は自分でこなせていました。定年を迎えてからも近所の友人たちとカラオケをしたり、一人でレストランや飲み屋さんに行ったりと、比較的のんびりと暮らせていたんです。買い物も近所のお店でまかなえていました」

80代を超えてから自立度は徐々に低下。離れて暮らすご長女の負担が徐々に大きく

元気に暮らしていたお父さまでしたが、80代が近づくにつれて体力の衰えが少しずつ現れてきました。歩くのに杖を使うようになり、家事の行き届かないところも目立つようになってきたそうです。ご長女はこの10年、週に一回ほどお父さまの自宅を訪れて掃除・洗濯や食事の用意などをサポートするようになります。

「私が訪れると洗濯物や使用済みの食器がたまっていて、ゴミも散らかったままということがしょっちゅうでした。そのたびに掃除をしたり食事を用意していたので体力的な負担は大きかったです。モノの片付け場所といった些細なことでケンカすることもあって、気持ちの面でも楽ではありませんでした」

さらに、お父さまは80代半ばでがんを患って手術を経験します。治療は無事に済みましたが、やはり体力や気力には影響したようです。

「父の住まいは3階で、しかも50年前の団地なのでエレベーターが無いんです。階段の上り下りがおっくうになり、外出の機会は少しずつ減っていきました」

段差が多い自宅、90代には不便が大きかった

90代に入り、ご長女も還暦を超えて負担が増しつつある中、要介護認定を受けて訪問介護を利用しながら一人暮らしを続けていたところ、お父さまは白内障も患ってしまいます。入院は1週間で済みましたが、「自宅でも忘れないように使ってください。さし忘れると感染症の危険があります」と処方されたのは、一日4回、3か月間ささなければならない目薬でした。

「やはり高齢なこともあって、父はさすのを忘れてしまうんです。そこでケアマネージャーさんに相談して、定期巡回サービスを紹介してもらいました。一日2回訪問に来てくださって、目薬の点眼支援やポータブルトイレの片付けをしてくれるのです。父のニーズにピッタリでした」

これは『定期巡回・随時対応型訪問介護看護』と呼ばれ、可能な限り自宅に住み続けたいという人のために、一日数回10~20分程度の訪問をしてくれる介護保険サービスです。
自宅を「終の棲家」として考える場合には、定額でニーズに柔軟に対応してくれる
・定期巡回・随時対応型訪問介護看護
・小規模多機能型居宅介護
といった介護サービス事業所が自宅近くにあることはチェックポイントの1つです。

また、お父さまは入浴にデイサービスを利用しているそうですが、その背景には自宅の住宅事情がありました。

「築50年の団地のお風呂は寒さがこたえるタイル貼りです。掃除も大変なので、父はだんだん自分での入浴がおっくうになったようで、今は週に2回のデイサービスでお風呂に入っています。今思うと、早いうちに暖かくて手入れが楽な浴室にリフォームしておいた方がよかったんでしょうね。父がまだ若かったころに浴室や台所、内装を一度リフォームしたのですが、バリアフリーを考慮していなかったので高齢の父に使いやすい作りではないんです」

特に取り付けておくべきだったと痛感しているのが手すりです

「父のようにかなりの高齢になると、トイレに行く、着替えるというちょっとした作業をするにも何かをつかんで体を支えたくなるものです。エレベーターがあって、玄関にベンチ、トイレ・浴室・洗面所に手すりを付けておけば、父にとって暮らしやすくなっていたんだろうと思います」

元気な頃は暮らしやすかった自宅ですが、年齢を重ねて心身の状態が変化することにより、自宅とお父様との相性が合わなくなってしまいました。

90代で在宅生活に限界を感じ、その先に備えて自宅から近いサービス付き高齢者向け住宅への住み替えを決意

介護保険サービスを利用し、ご家族と支え合いながら暮らしていたお父さま。友人とのカラオケや外食といった楽しみは頻度を減らしながらも続けていましたが、それも90歳ごろから難しくなってしまいました。

「そのころから急激に体力が落ちてしまったようなんです。身の回りのことをこなすのもかなり厳しくなり、やがて3階までの階段も上れなくなるのではないかという心配も出てきました。父と今後のことを話して、生活が困難になる前に高齢者向けの住宅を探すことに決めたんです

サービス付き高齢者向け住宅情報提供システムも活用しつつ、お父さまの自宅周辺でちょうど良いサービス付き高齢者向け住宅を見つけ、現在入居申し込み中だそうです。

「父の体力低下が気になってきたころから、
『家賃+共益費+サービス費+食費』
の合計が予算に収まる住宅をインターネットで探し始めました。
実は入居を持ちかける前に一度、『お祭りがあるんだって』とその住宅のイベントに連れて行ったんです。きっとそのときの印象も良かったんですね、住み替えの説得は意外にスムーズでした。自宅から近くて周りの環境が変わらないこともあって、住み替えた後も今と同じ介護サービスが受けられるのは安心です」

安心な老後には、個々の事情に応じた「早めの住まいの備え」が不可欠

お父さまのケースでは幸いにも、家庭内事故で怪我をしてしまうようなことはありませんでした。しかし足腰が弱り、そして自宅がバリアフリーではないこともあいまって、お一人での暮らしが限界を迎えていることも確かです。そんなお父さまやご長女にとって、バリアフリーで見守りのついたサービス付き高齢者向け住宅での暮らしが実現すれば、安心につながるでしょう。



老後の時間が長くなる『人生100年時代』の今、早めの住まいの備えはますます重要性を増しています。早いうちから、将来的な生活自立度の変化や、自宅の住宅事情を見据え、リフォームや住み替えなど、住まいの備えに取り組んでいくことが、安心な老後を送る上で不可欠なのです。

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※高齢者住宅協会は「高齢期の健康で快適な暮らしのための住まいの改修ガイドライン」(国土交通省)の普及活動を通して、住み続けるか住替えるか、いずれにしてもその方らしいお住まいの選択をサポートするための情報を発信しています。ご自身の住まい、親御さんの住まいが気になる方は、ぜひ「これからの住まいと暮らし」カテゴリ、「リフォーム」カテゴリの記事もご覧ください。

公開日:2020年4月3日|更新日:2023年2月20日

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