高齢者と呼ばれる年齢になったばかりで、サービス付き高齢者向け住宅に住み替えた理由は…高齢の親を送って考えた、早めの住み替え

「私も高齢者と呼ばれる年齢になりました。でも自分自身のことを『高齢者』とか『シニア』とかと呼ばれたくもありませんし、そう思いたくもありません。」とおっしゃる藤本さん。
そんな藤本さんですが、67歳でサービス付き高齢者向け住宅に入居されておられます。
それに至った思いを語っていただきました。

藤本ひろみ さん
ゆいま〜る伊川谷
入居年月 2009年11月/入居時年齢 67歳


目次

母が私に与えてくれた最後の教訓

高齢者住宅に住み替えようと思った原点は「母」です。介護が必要になってから私が身元引受人になって世話をしましたが、本当に大変でした。母に、「年をとって一軒家の管理は大変でしょう。悪いところじゃないから、とにかく見に行ってみよう」と高齢者住宅の見学に誘っても、頑として首を縦にふってくれませんでした。
ところが、76歳で大病を患い、自分から「どこか探して」と私に頼んできたのです。まず、自宅に近かった西宮の高齢者住宅に入居してもらいました。24時間の見守りがあり、部屋も広くて快適に過ごしていたのですが、当時、南大阪に住んでいた私が通うには遠すぎて……。それで、南大阪にある高齢者住宅に引越してもらいました。
そんな母も89歳で亡くなりました。その高齢者住宅は所有権方式だったので売却手続き、ずっと空き家にしていた自宅の処分など、事後処理が本当に大変でした。実家からも、住んでいた高齢者住宅の部屋からも、びっくりするほど大量の荷物が出てきました。母の想いが詰まった品々だと思うと、軽々しく処分できなくて、思った以上に時間がかかり、気も遣いました。
「生きている間も死んでからも、私の身の処理で周囲に迷惑をかけることのないよう、今から準備しておこう。いつでも身軽に引越せるように荷物も最小限にしておこう」。それが、母が私に与えてくれた最後の教訓でした。
 

入居者懇談会には一度も参加していないのに…

ここを知った経緯は、南大阪にある高齢者向け分譲マンションを見学に行ったとき、高齢者住宅情報センターのスタッフと知り合いになり、ほかにもいい高齢者住宅があれば紹介してほしいと頼んだのです。母のときに懲りていたので、「分譲型ではなく賃貸型がいい」と言ったら、「ちょっと面白いところがあるから」と勧められたのが「ゆいま~る伊川谷」でした。
見学に来たのはまだオープン前で、駅前の事務所でお話を聞きましたが、正直言って、100年コミュニティ構想や完成期医療といった理念はあまりよく理解できませんでした。運営会社と入居予定者が定期的に入居者懇談会を開いて、暮らしのルールを検討していくというハウス作りの姿勢には共感しましたが、今からその仲間に入るというには気後れがして、結局、入居者懇談会には一度も参加しませんでした。

そんな私がなぜ、ここへの入居を決めたのか。それは、なんと言っても「駅前約1分」の便利さにあります。年をとればとるほど、体力も気力もなくなってくるので、交通の便のよいところに住むというのは、高齢期をフットワーク軽く過ごし、毎日の生活を楽しむために欠かせない条件だと思っています。
「行きはよいよい、帰りは怖い」と童謡でも歌われているでしょ? 行きは元気があるから気にならない距離でも、疲れて帰ってきたら、駅からの道のりがすごく遠く感じて、ついタクシーに乗ってしまう。そのうち外出そのものが億劫になる。そうはなりたくなかったんです、私。
その点、ここは、プラットホームから建物が見えています。駅に着くと、「我が家に帰ってきたぞ」と思える安心感は、ちょっと他のハウスにはない魅力ではないでしょうか。

“気力・体力のあるうち” にと60代で入居

60代での入居は早すぎないかって? いいえ、全然! かねがね、“終のすみか”への住み替えは、「体力、気力のあるうちに」と思っていましたから。それまでの住まいの掃除や荷物の整理、引越しした新居の片付けといった体力的なものは人様のお世話になることもできますが、気力が必要なことは人様に代わっていただくわけにいかないでしょう。
たとえば、どこに住み替えるか、候補を探して検討したり、契約を交わしたり。人様にお願いすることもできるでしょうけど、やっぱり自分で探して、自分で決めたいじゃないですか。それに、引越してからその住まいや地域に馴染むにも、すごく気力が必要なんです。せっかく新しい住まいに引越してきたのに、周囲に馴染めず引きこもっていたんじゃ、つまらないでしょ。だから、60代での“終のすみか”への住み替えは決して早すぎることはない、と私は思います。このハウスには、私以外にも60代で入居された方が大勢いらっしゃいますよ。
ハウスで開催される講座に参加するなど、毎日を楽しく過ごしています。

お買い物は地下鉄で2駅先の「西神中央」が多いですね。複数のショッピング施設やスポーツクラブもあって本当に便利です。ハウス主催の講座を一緒に受けている方、廊下や食堂で会ったらおしゃべりする方などハウス内のお友達に加え、散歩で知り合った地域の方とも仲良くしていただいています。
今はまず、自分自身の暮らしをいかに充実させるかが大切だと思っています。お友達と待ち合わせて大阪まで観劇やコンサートに出かけたり、奈良へ仏像を見に行ったり。けっこう忙しいんですよ(笑)。

周囲の手をできるだけ煩わせないように準備

終活については、「焼かれるのは嫌だから、背後に山を抱いた海辺に埋めて」と言っても無理でしょ? だから、死んでからのことはいいんです。成年後見人の手続きはまだしていませんが、とにかく周囲の方の手をできるだけ煩わせないですむよう、きちんと準備しておきたいと思っています。
「断捨離」は無理ですが、できるだけモノはためこまないように心がけていますし、終末期に受けたい看護・介護についても書いておこうと思っています。延命はしてほしくないけれど、救命医療なら受けたいと思っていますので、やはり、最期は病院で迎えることになるのでしょうね。
24時間の見守りがあり、必要なときに必要な手助けをしていただき、入居者の自主的な活動や地域との交流を支援してくださるなど、スタッフの方は本当によくやってくださっています。運営会社やスタッフの努力があればこそ、と感謝しています。
ただし、今は入居者の平均年齢が比較的若いから、そんなには手がかかっていないと思うんです。でも、あと5年、10年と過ぎて、入居者がもっと年を重ねたら、今とは比較にならない労力がかかる場面も出てくるのではないでしょうか。そんなときに今の体制で大丈夫なの? という懸念はあります。
今は赤字運営で、「できるだけ利用してください」と協力を求められることの多い「ゆいま~る食堂」ですが、入居者が高齢化し、利用率が高まると、今の状態では充分なサービスができなくなるのではないかしら……。入居者の高齢化を視野に入れた計画があるなら教えていただけると安心なのですが、そうした話は出てきていませんね。
人間は欲深いから、よくされればされるほど「もっと、もっと」と要求が高まります。年をとればとるほど、しっかり包み込まれて身を預けていたい欲求が高まっていきます。入居者が今よりも年齢を重ねた何年後かに、ゆいま~る伊川谷は真価を問われる正念場を迎えるかもしれない。そんなことも考えるんですよ。
(2012年9月27日)

エピローグ~入居後10年経過して~

藤本さんが「ゆいま~る伊川谷」に入居されてから11年、このお話を伺ってから9年が経過しています。今現在はどのように暮らしておられるのか、住宅のスタッフに聞きました。
「もちろん今もお元気で暮らしておられます。新型コロナウイルスの影響で、以前のように観劇やコンサートには行けなくなりましたが、愛犬との散歩や、様子を見ながらですが近所の方とグランドゴルフに興じ、自由な暮らしを楽しんでいらっしゃいます。」
以前に心配されておられた10年後のスタッフの体制について伺いました。
「ゆいま~る伊川谷は開設から10年が経ち、介護認定を受けられる方も増えてきました。毎日の安否確認と困りごとにフロントが対応し、介護保険サービスを利用していただきながらお暮しになっています。また、介護保険サービスでは足りないところは、スタッフのサポートも以前に比べ増えています。フロントでは、その人らしく暮らせるためのサポートはどんなものなのか、常に模索しています。
見守るスタッフが身近にいるという安心感、そしてその人らしい自由な暮らしが謳歌できるという、サービス付き高齢者向け住宅ならではの生活でしょう。
藤本さんのように、人生を常に前向きに捉え、早め早めに準備をする。そして生活の拠点である住まいは、いろいろな選択肢がある中で、「自分で探して、自分で決める」。それが藤本さんにとっては、「駅前約1分の便利さ」だった訳です。

 自分で探して、自分で決める。そして終の棲家にする、早めに考えたい、とても大切なことですね。住み続けるか、住替えるか。高齢者住宅協会の運営するオンライン相談へ、一度相談してみませんか?

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